サルビアと春雷/マーブル
サルビアの女よ 朱い唇を震わせ
何故なんだ 白い手で泥を掬う
指先から零れる同罪をある男と結び合わせてしまった頃
ああ 春雷は鳴りやまない
風呂場で雷光の白さに白昼夢を見ているその心臓の目は10年前から何ら変わってなどいないだろう
数十分で洗い流されたアカは泡と少しの早春に焦燥したったの数十分のあいだに終わったことなのだろう
ほうらほうら 雨に濡れた新聞紙で出来た飛行機を飛ばそうとあなたは一瞬のうちに大空へ飛び立ってしまった
おおいおおおい と手を広げて大空を泳いでみてもわたしは27歳のわたしに途方もなくあてどもなく
ああ 春雷は鳴りやまない
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