あめだま/そらの珊瑚
 
薄いセロファンに
優しく包まれている
そのなかに
甘いものが
入っていることを
私は知っている

子供のころ
歯医者が大嫌いだった
何より
歯医者のおじさんが嫌いだった
というか
恐怖だった
マスクをしているので
何を言っているのか
ほとんど
聞き取れないし
どこか怪人めいていた
けれど話しかけられたら
何かを答えなければならない
五歳の子供は
みかけより
ずっと常識人なのだった

金属音を鳴り響かせながら
治療という名の責め苦が続く
なんとか
泣かないで
やり過ごすために
私は
楽しいことではなくて
五年の人生のなかで
一番おそろし
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