あの日友達と/番田
目に見えないものばかりを見つめようとしていた。自分が、他人の中にいるのだと気づかされた。遠い日には、子供だった僕。アメリカの古い歌ばかりを聴いていたっけ…。僕は、壁のレンガばかりを見つめていたものだった。だけど、日本の歌も好きだった。僕は中学になると、ギターを手に入れて、その歌自体の持つ構造に呆れさせられたものだった。思い出とは、何だろう。僕は、全くの落ち着きのない子供だった。本は、全然読まなかった。そんなものに魅了されている自分がつまらなかった。全ては、まったくの子供だましに思えたのだった。例えば、未来を切望するほどに、現実の持つ真の意味からは遠ざかっていく。自分の中でしか、人は生きてはいけないような気もした。窓の通りの向こうから、トラックが大きな音を立ててやってきて、この古いマンションの前の通りを通り過ぎていく。僕は今日も音楽を聴いていた。別れた友達の言っていた言葉を思い出した。
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