ユートピア/塔野夏子
 
愛し合うことで
この世界を美しく汚(けが)そう
互いの内なる罪の昏さに
惹かれ合った二人だから

二人がいろいろなかたちで
抱き合うそのたびごとに
幾重にも罪は深く響き合う
二人の身体から闇が溢れ
あやしい花のかたちに広がってゆく
二人を覆う空も爛れ
日も月も星も
毒を帯びた光を放ちだす

識っている
罪ある二人は
めぐり逢い愛し合うことで
さらに罪を重ねていると
そしてその罪は
それ自体がすでに罰なのだと

けれどももはや逃れようもないのだ
残酷に愛し合いつづけ
この世界を美しく汚しつづけよう
あやしい花のかたちに広がる闇の
中心の聖域へ
いつまでも落下しつづけよう

他の誰も知らないおののきの鎖に
二人して輝かしく繋がれたまま




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