望むひと/恋月 ぴの
として
埋められない
そっけない吐息の氷の冷たさと
3
裏切られた記憶を引き摺りながらも
託してみる
依存心が強いだけ
そうなのかも知れない
それでも
春の兆しは優しげな日差しに揺れ
曖昧な微笑みの意味を紡ぐ
そして胸のうちにと折り畳み
移り行く季節の刹那に乱れた髪を整える
4
明日はお彼岸の中日
いつもの年なら紅梅白梅と可憐な春の賑わい
そぞろ歩きでさえ惜しく思え
ことさらにゆっくりと境内を歩んだのに
足早とは至らぬまでも
日陰の冷たさに首をすくめ
春の訪れを口ずさむ枝先越えの陽気に心なしか綻び
水に流そうと無言で問いかけてくる背中に答え
そっと腕をからませた
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