望むひと/恋月 ぴの
 
として
埋められない

そっけない吐息の氷の冷たさと
 



裏切られた記憶を引き摺りながらも
託してみる

依存心が強いだけ
そうなのかも知れない

それでも
春の兆しは優しげな日差しに揺れ
曖昧な微笑みの意味を紡ぐ

そして胸のうちにと折り畳み
移り行く季節の刹那に乱れた髪を整える




明日はお彼岸の中日
いつもの年なら紅梅白梅と可憐な春の賑わい

そぞろ歩きでさえ惜しく思え
ことさらにゆっくりと境内を歩んだのに

足早とは至らぬまでも
日陰の冷たさに首をすくめ

春の訪れを口ずさむ枝先越えの陽気に心なしか綻び
水に流そうと無言で問いかけてくる背中に答え

そっと腕をからませた









戻る   Point(28)