望むひと/恋月 ぴの
 


必要と頷いても
近くにあっては困るらしい

それは遠くにあって
必要なときにだけお世話になる

ありがとうございました

添えたお礼と深く折り曲げた腰を上げてしまえば
あとは総てを水に流す




肌触りのよい言葉

拒む仕草を組し抱かれ
耳元で囁かれた

いずれは許すつもりでいたとしても
今すぐでないことは確かだった

愛の確証と引き換えに身体を開く

例えしたたかと揶揄されたとしても
そのほかにどんな術があるって言うのだろう

無様なほどに引き裂かれた脚を閉じ
敢えて問いかけてみる

背中越しに返ってきた返事で埋めようとし
[次のページ]
戻る   Point(28)