カイダン/リンネ
 







特に書くこともないが、何もやることもほかにないので書き始めている。書くことのないのは幸せだ。書くことは、書くことがあるのは幸せなわけがない。恨みつらみを持った人は書くことがあるということだ。書くことは何かそうやって書いたものをだれかに訴えるということだ。だから幸せな人は書く必要には迫られない。しかしこの世に幸せな人がいるというのも信じがたい話だ。わたしこそは幸せ者だと信じ込んでいるやつは、実は不幸であるということに気づいていない居た堪れない連中だ。生きるのは、言ってみれば苦痛でしかない。けれど生きることと苦痛であることが同じ意味なら、生きていることも悪くない。Kは階段を
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