欠伸/ホロウ・シカエルボク
真紅の壁を
真っ白に塗り潰すような時間の中で
喉の渇きを覚え、だが
ページをめくる指を止めることはなく
幾つか咳をして
唇を舐める
昨日より冷える気温と
昨日より
緩慢な脳髄
数時間前のカフェインが
身体から抜けきって
ボンクラみたいにフィリップ・マーロウのやることを眺めていた
中途半端な距離の路上で
下衆な連中が道を掘り返してる
割れた声と吸殻で
辺りが汚れる
交通誘導警備員は
自意識があるだけマネキンより始末が悪い
そう思っているみたいな顔で立っている
天気、曇り
午前にはもう少し太陽があった
だけど今日は
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)