開宴の前に/まーつん
 
曇り空
天駆ける白馬の足跡が
頭上を覆う 掛布団の裏に刻まれていく

世界はまだ 眠っている
憎しみや 苛立ちの悪夢に
苦しげな 寝返りをうちながら
それは白い眠り 長い冬の終わり

曇り空
灰の地平の 向こうから
春の女神が 射掛けてくる
温もりの兆しを 矢頭に結んで
街のあちこちに降り注ぐ 始まりの種子
人知れず小さな つぼみをもたげる 野花の茎
妊婦の腹で身じろぎする 胎児の夢
乾いた空気を濡らす 地の肌から立ち昇る湯気

世界はまだ 眠っている
そしてまた 目覚めようとしている
今まで 幾度となく繰り返されてきた
そして 二度とない 二つとない

新しい始まり



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