イチゴ狩り/ただのみきや
今年もこの日がやってきた
例年と同じ農園のビニールハウス前に
イチゴ狩りに魅せられた老若男女二十数名
斜に構えたり 無言を装ったり
だが皆が高揚を隠し切れずにいるのだ
農園の主人は愛想笑いもそこそこに
巨大なハウスの扉を開いた
初夏の野山を思わせる温かさと湿り気
おお甘き香り イチゴの楽園よ!
交配用のマルハナ蜂の羽音も心地よく
微かに イチゴの息遣いが伝わってくる
一つのハウス内に三つの畝が並び
遠く八十メートルはあろうか
その端っこにわたしたちは息を殺して整列している
心臓の鼓動がイチゴたちに聞こえはしまいか心配だ
農園の主人が語るルールと注意点の説明な
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)