行方/salco
 
れて事切れたのだ
泥水に残された遺体
海から揚げられた遺体は悲惨な姿だったという
それを
死後の安息で粉飾できるのか
濁流に呑み込まれ、為すすべなく
沖合へと攫われて行く生前の
想像を絶する絶望を

慰霊、鎮魂
という情実がある
助けなくてすまなかった
という罪悪感がある
どんなにか苦しく恐かったろうね
という同情がある
それは祈りという対話の試みでもある
果たされようのない対話の試みである
死者に向け瞑目し献花する時
だが哀惜の用もない他人が彼らを
天国、浄土という
実体なき観念に丸投げするのは
視点を捨て去る安堵の為ではないのか
非業の死
その最期への想像力を働かせなくなる時
それをファンタジーへ「片す」時
それは忘却の、遺棄の一歩ではないのか
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