行方/salco
死ぬ時はひとり
病床で死に向け衰弱して行く
ひとり剥がされて行く
それは寂しいことだ
あらゆる愛着を諦めさせられ
消えて無くなるのを
是認させられるだけの日々
世界に別れを告げ
明日に別れを告げ
自分に別れを告げる
こんなに無力な身となって
全て独りでやらねばならない
母は合掌するようになった
最後の入院の三週間
点滴交換や体温管理をして
出て行くナースに合掌し
集いを催した家でも
病院へ戻る時、深々と合掌した
お地蔵さんみたいに微笑んで
深謝と別れの挨拶だった
あの勇躍とタフだった人がと
見る方はたまらなかったが
そうした時を持てたのは
幸せな死
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