ずっと待ち合わせ/あおば
120312
ありのままの人生を
赤裸々に語る初老の男
これ以上嘘を付きたくないのではなくて
ありのままを語ることに優越感を覚えたように
笑顔混じりにいつまでも語る
そろそろ嘘の季節に入ったようだと
薄ら寒い綿の抜けたかい巻きを抱き
広い廊下を歩いて行くと
そこではない!
突き当たりを開けてその奥に布団部屋がある
そのへんに屯しているはずだから
はやくしょっ引いてこい!
わめき声が背中をどやすので
こんちくしょういまに見てろと
拳を固め
かい巻きを楯に振り返るが
姿は見えない
空耳にしては腹に響くのが妙だ
云われたまま
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