石膏像は見せかけの黙祷をする/ただのみきや
 
ずに 
ただ 地震と津波と原発を話題にしては
声高に話していた

この3月11日に人々と共に
痛みを共有できない 
自分はまるで異邦人だった
胸に一本のナイフすら突き立てることもせず
ただ辺境から悲しみの儀式を無表情に見つめている
家族や財産を失った被災民にとって
自分はおそらく人間ではないのだろう
男は思った レプリカの石膏像のように
冷たくて無意味だと 
そして思考の扉を閉ざし ベッドで
二流の小説をめくり始めた


戻る   Point(11)