友よ/いねむり猫
 
瞳に見入ることは
 もう かなわない


この秋のあまりの美しさに 
帰るべき方位を 見失ってしまった友よ

 おまえを呼んでいる おれたちの声が 聞こえないのか
 病室で おまえを呼び続けた 悪友たちを 置いていくのか

 おまえを 生み育てた母を 一人にしてしまう


この秋の美しさは 悲しみで いっそう美しい


見事な紅葉を見るたび 
晴れ渡った空を見上げる度に

 私は おまえを小さく呼び うつむくことだろう



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