詩人の退職金/オイタル
一分一秒も休まずに
詩を書いているわけでもあるまいし
詩を書いてる時間なんて
書いてない時間の何分の一
何十分の一
それなのに
詩をやめた
なんてことがあるだろうか
詩を書いて
誰に実入りのあるわけじゃなし
何十年間ごくろうさま
なんて
退職の会があるわけでもなかろうし
ぽつりぽつりと歩いてきた
詩人の退職金は
いかほどのもの
でございましょうか
お情けや年金で食ってるような詩人がいるか
自分の食いぶちくらい自分で稼ぐつもりで
商売始めた詩人やら
こつこつ真面目に給料もらったり
あるいは
もらわなかったり
始めも終わりもなく
ろくに食わずに死んじゃった詩人やら
いろいろいるけど
終わった詩人の退職金って
果たしていかほどのもの
なのかは
どこの保証があるわけでなし
だれの感慨あるわけでなし
ただふいと止まって
見上げる山の
中腹辺りにへんぽんと翻る
小さな旗が
お前の退職金だと
訳もわからんセリフが
聞こえてくる
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