黄昏は逃避行/アオゾラ誤爆
る/
フロントガラス
その向こう、よく知らない土地の
ガイドブック通りでないありさま。
冗談を抜かしあうには
つめたすぎる、熱すぎる、
「ねえ、」
瞳で合図して。もどかしいから。
あなたの太い腕がわたしに届こうとする
無骨なつくりの左手は
控えめに服をすべり、
取れかけのプラスチックのボタンに
そっと手をかける。
(爪、きれいに切りそろえられている)
もうすこしで日が落ちる
聞きなれた喧騒からは100キロも離れた地図上の★(ホシ)
新しくぜいたくな空気を
肺いっぱいに吸い込めるような木立の海
「もう、どこへもゆけない
こんなところまで来たのに」
小高いこの場所からは集落が点々とみえていて
あなたの緊張した睫毛をぼかしたり
迷いなく伝わる熱についての思惑を
ひっくりかえしたりする、
「あ」
「ねえ、」
「だめ」
じっとしていると
時間が止まってしまいそう。
カーステレオからは誰かの声が能天気に響いている
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