七十億/salco
 
眠りからやがて
形而上学と不条理と予定調和とに立脚した
至高の知能動物へと
ザムザ君ばりの変貌を緩慢にだが遂げて行く
それ自体が独立した、
最も柔らかで稀少な小動物であるかのような手に
必ず何かを握りしめて生まれ
全てを手放す日の為にすくすくと育って行く
親たちは盛んに歓呼拍手し
気忙しい周章狼狽を繰り返し
いつしか漆喰壁の向こうに我が子を見失う
だがこの無垢なる微笑が至宝として
人間の中心に据えられているわけではない事を
産む前から共犯者のように知っていたのだ
社会が熾烈な競争原理の篩だと
世界が食い合いの坩堝だと
地球はキナ臭いゲップで動いていると

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