未来に乗って/灘 修二
 
未来は、けぶる朝霧の中から、わたしを迎えにきた。草木眠る大地をならして、止まった。吐いた蒸気は霧の中に消えて行く。ドアが開くが、降りる客はいない。この機関車は乗る客しかいない。

私は未来に乗る。みんな笑顔で迎えてくれたが、人々は誰も無口だ。行く先を知っているかのよう、知らないかのよう。未来はあるかのよう、ないかのような顔をして、わたしに告げた。駅は一つ、終着駅です。

真っ赤な服をきた黒ひげの車掌がきて、行き先を尋ねた。わたしはわからないと答えた。渡された切符に書いてあったのは、行きは未来、帰りはわたし。

重い黒鉄の固まりが、ゆっくり動き出す。朝霧は消えて、晩夏の日差しにかわり、未
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