語る死す/kaz.
ては枯れていく。枯れていくのを見送るあいだに、どれほどの時が経ったろう。時が経ったことを感じようとすれば、かえって感じることができないものだ。夜、夢を見ようとするが、見ようとすることでかえって見ることができない。という夢を見たような気がする。夢を見たのかどうかさえ、ぼくには分からない。分からないということが夢の中身であるような気さえしてくる。
「眠りたくなる」
「眠りたくなくなる」
「眠りたくなくなくなる」
「眠りたくなくなくなくなく……なる」
(どっちでもいい。どっちだっていい。いいわけない。いいわけないわけない。もう、どうだっていい。ぼくは、そこで筆を折る。「そのときの怪我で、彼はピアニストとしての資格を失う」という一文が挿入されて、主題は変わってしまう。本当に折ったのか、あるいはただ書くのを辞めたのか、もう区別できない)
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