賢治とシラーとベートーヴェンと(おおよそ統計に従はば)/soulflower
 

おおよそ統計に従はば
諸君のなかには少なくとも百人の天才がなければならぬ


宮澤賢治「生徒諸君に寄せる」より。全く具体的でも統計学的でもないのに、何故かわくわくさせられる数字のロマン。

未完のまま眠っていたこの作品が公開されたのは、昭和21年の「朝日評論」誌上。しかしそれは八つの断章を切り裂き、つなぎ合わせ、細部に至るまで改変したものだった。かくして、「百人の天才」は「千人の天才」と書き換えられた。
彼らは「百人」の抽象の中にこそ生まれる刺激を解さなかったのだ。「告別」が読まれるとき、詠われるとき、あの「町と村との一万人」のなかの「五人」、そして「五年」のスケールは
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