すばる/木屋 亞万
が、ついに何も話さなくなった。緊張を解いたら、生暖かい空気が部屋全体にふわりと降りてきていることに気付いた。網戸にしてある窓から、雨上がりの春の空気が風に乗って入ってきたのだろう。
「むむ、わかりましたぞ。あなた様の恋のお相手は、意外や意外、担任の女教師にございますね。これは早熟な上に年上好みですな。熟女というにはまだ若いですが、あなたのお母様とさして齢の違わぬ女性です。すでに結婚をして子どももおられる。これは発展しようがありませんな、幸先が良いのか悪いのかよくわからないお方だ。美しくやさしく器量に溢れた女性ですから、良いお相手であるのは間違いないのですが、彼女から観たあなたがどのように映ってい
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