すばる/木屋 亞万
 
呼ばれておりまして、恋の伝道師のお仕事もしておるのですよ」
返答に困って目を閉じていると、彼は絶え間なく羽根を動かすように、すごい速度でたくさんの言葉を僕に投げかけてきた。耳で聞き口で話すのは人間同士の会話のときだけで、虫と人が話すときは虫の出す声をどこか他の器官で受け止めているのだと僕は気付いた。とてもじゃないが、このテントウムシの羽音を耳で拾っていたのでは、人ごみの会話をすべて耳で聞き取ろうとするくらいに無謀だ。彼の羽音がすべて言葉であり、それは時に折り重なり、時には一つの音の団子となって、僕にメッセージとして送りこまれてくるのだった。彼はもしかすると僕の中に入り込んで、直接メッセージを身体
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