十九歳の雛祭り/緋月 衣瑠香
んだって」
玄関から姿を消した蝋梅のような
半透明な黄色いソーダは私に吸収される
今玄関を彩るのは
咲き誇る桃と固く閉じた白梅
「蝋梅は梅じゃないのよ」
「梅に似た花で蝋細工のようだから、蝋梅」
本と本の間の新聞紙のそのまた間
ぺしゃりとした半透明の花びら
健在する黄色い窓を覗けばまだ冬で
その向こうに春がいる
体内を駆け巡る血液のような炭酸を
春を伝える花のように染まる大人たちの頬を
口の中で笑って収める
どんどこと音を立てる
不条理なようでいて逆説的なような春
もうしばらく
黄色い窓から覗いていよう
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