深海魚は固いベッドで横になる/ただのみきや
れるだけ
記憶はなにも残らず
ただそこでのみ
人はいやされる
詩人もそこへはたどりつけない
たとえ深海の魔物に姿を変えようと
そこはいのちと死が混在するところ
近づいては その光でいやされるが
いつの日にか そのまま深く沈み行き
意識は融け去り もう肉体には戻らない
ヒマラヤほどの朝がなだれて来ると
わたしの一日がアナログレコードのように歪みながら
ノイズを刻んで回り始める
無意識の詩人は眠りにつき
朝の港に揚げられた深海魚は必死
口から内臓を吐き出しているのだが
そこには虚しく色を失った
夢の欠片しか見つからないのだ
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