水色と灰色の昭和/吉岡ペペロ
 
僕の昭和は40年代後半からだった

喫茶店の入口を飾るレプリカのような

素朴な人工がひかり輝く日々だった


遊ぶのは工事まえの土くれのうえだった

わざと転げて服をよごす

元気に遊んでいたことを伝えたかった

擦り傷だらけのテーブルに落とした涙

松やに色をした灰皿はからっぽだった

いまより色が少なかった

色の種類といえば

鮮やかであるかくすんでいるかぐらいのものだった

土手のむこうには光化学スモッグ

水色と灰色の空に雲がじっとしている


僕の昭和は40年代後半からだった

喫茶店の入口を飾るレプリカのような

素朴な人工がひかり輝く日々だった





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