Early Water/木立 悟
切りすぎた爪の先の先
吹雪は落ちてまた落ちて
左目の
ふとした鼓動
耳 かたむき
地表の円
泥の紋
飛沫の花
管楽器の一音に
若い宇宙はついてゆく
億 京 那由多 無を辿り
絵の具のにおいと共に漂う
別れを告げるたび
橙色になり
海に花を差し出す岩
影は着き 影は澱み
光の震え
鍵の音
ふたつがひとつに
融けた鈴の音
目を閉じ
水を探せば
見えてくる影
音の背中
紙の下に鳴る鉱を
文字が文字に消えゆくさまを
空に触れては離れる蒼を
ひりひり纏い 放たれる窓
小指をまるめて生まれる鈴が
雪を吸っては吐きつづけ
閉じた片目を聴いている
水のかたちを聴いている
朝の路に降る
かけらの幻
冷たいものだけが持つにおい
やわらかな四角を描いてゆく
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