鬱病患者のブランコ/雅寛
黒いアイシャドウ。
ピンク色の口紅を塗って、
少し時間を掛けて、
髪の手入れをしている。
今日の為に選んだ服を着て、
何度も何度も鏡の中で悩むんだ。
なかなか外に出られなくて、
だけど、今日だけは時間に遅れたくないんだ。
準備を念入りにしたら、
君が待つ公園まで行くよ。
君に言い忘れた事が有るから。
君は少し驚いた顔。
僕は君に寂しく笑い掛ける。
こんな遠くまで来させてごめんね。
でも此処で言いたかったんだ。
―桜が綺麗。―
僕は見慣れた公園で、
昔の事を思い出す。
良く遊んだ思い出とか、
泣いた思い出とか、
でも何時の間にか此処に来る事は無くなった。
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