見ている/長押 新
 
わたしはもう本当に眠りたいんです。お母さん、あなたはまだ湿った布団で眠っていますか。えいえんを手放してしまいました。えいえんが狭すぎるから。血を流さなくても痛いのに血の流れる描写だけが流れていきます。

雲の切れ目。無数の瞳が火の魂のように揺れ水面に注がれる。雲が空の色に変わり、ここはすっかり昼になる。

女の手より柔らかい波が、しなやかに底を削り取る。地べたは湿っていて、乾いている時よりも風を感じる。指が躊躇いながら強く、押し出される。その手はわたし。爪の間に泥が入り込んで、きついと騒いでいる。

わたしは魚ごと飲み込んで、わたしになる。魚もわたしだから、鱗や鰭が刺さっても平
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