ひと借り峠/乾 加津也
歩くのはいつも なまの義足
寄木細工のじん帯をか細い骨で震わせながら
足裏に
肌合いのわるい
なじめなさを押しつけても
二つのものが 交互に役割を担うから
どこか
と呼ばれるcell(セル)に移る外来種
あいことばは
方角
なんてロマンティックな定義
つめたい布陣を星屑と呼ぶ日 うしろから
肩にのびるひとかたの手
怖がるな きみの声だ
( 腐っても生めない恥を 宿したままだから )
堪忍な あゝ 堪忍な
うつ伏して 均整のとれる
やわらかな腕をください
そうか
代わりにきみを「ひと借り峠」と名づけてあげる
むくな器 ら
たやすく触手を延ばしたがる 華奢なことば ら
あどけないのど奥に脱脂綿をつめたまま
肛門から銀河を垂れ流す痛み ら
歩き/象る/足と腕で
映し/ごもる/目と口で
峠は踏み固まるだろう
下れ
かすみのように
なにも唄わず
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