秘すれば花/HAL
 
から去ろうと決めた

だけど借り言葉だけど
さよならだけがきっと人生なのだろう

ネフローゼでこの世界から去ってしまった
愛する詩人が続けた言葉は知っているけど

さよならだけが人生ならば
また来る春はなんだろう

その言葉は間違ってないし
ぼくが否定できる分際ではないことは

重々に承知のうえだけの葛藤はあったけど
やはりぼくは去ろうとの決心に辿り着いた

ぼくはぼくの想いを永遠に隠して
新しい街から出直したいと望んでいる

もう移る街は決めてしまった
持っていく荷物も大してない

さようなら お元気で お礼も添えたい
でもそれはきっとあのひとを戸惑わせる

この歳になってからまさか恋に落ちるとは
自分でも想ってもみなかったけれど

秘すれば花との言葉もある
だからやはり何も告げずにぼくはこの街から消える 
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