秘すれば花/HAL
から去ろうと決めた
だけど借り言葉だけど
さよならだけがきっと人生なのだろう
ネフローゼでこの世界から去ってしまった
愛する詩人が続けた言葉は知っているけど
さよならだけが人生ならば
また来る春はなんだろう
その言葉は間違ってないし
ぼくが否定できる分際ではないことは
重々に承知のうえだけの葛藤はあったけど
やはりぼくは去ろうとの決心に辿り着いた
ぼくはぼくの想いを永遠に隠して
新しい街から出直したいと望んでいる
もう移る街は決めてしまった
持っていく荷物も大してない
さようなら お元気で お礼も添えたい
でもそれはきっとあのひとを戸惑わせる
この歳になってからまさか恋に落ちるとは
自分でも想ってもみなかったけれど
秘すれば花との言葉もある
だからやはり何も告げずにぼくはこの街から消える
戻る 編 削 Point(6)