倒れるもの/木立 悟
光ではないものをずっと見ていた
ゆらめく夜をずっと見ていた
倒れるために在るものばかりが
わたしに向かって近づいてきて
わたしのなかへと消えていった
目の前に
目の前ではない目の前があり
動くわたしを突き破ってゆく
重なりは重なり 重なりつづけ
裂けめをふさいでわたしにもどす
わたしをわたしにもどしてよこす
空のなかを遠のく空を
澄みすぎる色のかたまりを見ていた
片目を閉じていることを忘れ
ずっとずっと見つめていた
片目に入れなかったものたちが
背につづく道へと去っていった
雲から垂れ下がる光の線を
首を反らせて見つめていた
線の端は削られた木のように
細い波の傘のようにひらき
わたしの点を照らしていた
わたしのなかへと消えたものたち
倒れたものたちを照らしていた
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