血のない痛み/びわ
いつもはあんなにも強い空が
今日はまったく私の視界を占めはしないのです
いつもなら決して
松やクレーンやその他のビルなどに 負けやしないのに
いつもなら
松の針の細さになど気付きもしないのに
日が沈んで行きます
昼間から私の左腕の手首の一番太い血管が
渦を巻いて 流れて行かないのです
皮膚を裂くのはとてもいやだ
あぁ 夜中に誰かがこの血管に
有刺鉄線でも巻いてくれればいいのに
砂浜もないのに松は整然と列んでいます
空に飲み込まれなかった針は
ぐるぐると渦を巻き
やはり空は遠いまま 日は沈む
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