血のない痛み/びわ
 
いつもはあんなにも強い空が

今日はまったく私の視界を占めはしないのです

いつもなら決して

松やクレーンやその他のビルなどに  負けやしないのに


いつもなら

松の針の細さになど気付きもしないのに


日が沈んで行きます


昼間から私の左腕の手首の一番太い血管が

渦を巻いて 流れて行かないのです


皮膚を裂くのはとてもいやだ

あぁ 夜中に誰かがこの血管に

有刺鉄線でも巻いてくれればいいのに


砂浜もないのに松は整然と列んでいます

空に飲み込まれなかった針は

ぐるぐると渦を巻き

やはり空は遠いまま 日は沈む
戻る   Point(1)