顔なしのひと/恋月 ぴの
た部屋は女っけなし
ひとり寝の夜は寂しくないのかな
というか
そんな思いは不必要なぐらい男を感じさせる匂いしなくて
お気に入りの楽曲とかを解説するのに熱心で
ブラウスからのぞく下着の色には無関心だったりする
※
やっぱ身勝手なんだよね
ひとりじゃ生きられないとしても
誰にも心を開いたりはしないし
なんか話し相手欲しいなと思ったときには
そばには誰もいなかったりする
寂しがりやでもあるんだよね
寄りかかりあいながら生きるのが「ひと」ってことらしいけど
わたしの寄りかかるひとにはなぜかしら顔がなくて
自販機みたいに同じ言葉を繰り返すだけ
でも
それが心地よいなと思うわたしも確かにいたりして
わたし自身の顔だっていらないんだけど
あんたも消えちゃえば
鏡に映る顔に向かってつぶやいた
戻る 編 削 Point(30)