顔なしのひと/恋月 ぴの
 
た部屋は女っけなし

ひとり寝の夜は寂しくないのかな
というか
そんな思いは不必要なぐらい男を感じさせる匂いしなくて

お気に入りの楽曲とかを解説するのに熱心で
ブラウスからのぞく下着の色には無関心だったりする




やっぱ身勝手なんだよね

ひとりじゃ生きられないとしても
誰にも心を開いたりはしないし

なんか話し相手欲しいなと思ったときには
そばには誰もいなかったりする

寂しがりやでもあるんだよね

寄りかかりあいながら生きるのが「ひと」ってことらしいけど
わたしの寄りかかるひとにはなぜかしら顔がなくて

自販機みたいに同じ言葉を繰り返すだけ

でも
それが心地よいなと思うわたしも確かにいたりして
わたし自身の顔だっていらないんだけど

あんたも消えちゃえば

鏡に映る顔に向かってつぶやいた





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