一個の孤独/ただのみきや
山砂はもうない
海砂ばかりが浚われ
洗われ
遠く運ばれ
混ぜられる
ごくありふれた砂粒に時折混ざる
貝の欠片の白い顔
ガラスの名残の澄んだ瞳
際立つ別嬪な粒子たち
僅かに
微かに だが
確かに
そこに在った
突然門が開き
数十トンの砂は滝のように流れ下り
陰鬱なセメントとの強制結合
型枠の中に吐き出され
鉄筋の骨格を覆う硬い体へと変貌する
一つの塊
一つの人工物
個々を分かつものは何もなく
あの潮騒の感覚
海の記憶すら
もはやない
誰もが群衆という砂塵の一粒
巨大な
一個の孤独
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