れんげ/ピッピ
「死んじゃったって分かったってことは、事故かな」
「うん」
「哀しくなかったの」
「哀しかった」
「どれくらい」
「哀しさに、大小関係はないよ」
「そうだね」
赤い首輪をつけたスクリーンの中のれんげはとても嬉しそうだった
れんげは牛乳を好まないでいつも水ばかり飲んでいた
縁側で日光を浴びるれんげ
危うく轢かれそうになったれんげ
わたしとれんげが何回かの質問をするあいだに
たくさんのれんげがスクリーンの中で動いていた
なんだか涙が出そうで出なかった
それを恥ずかしいことだとも少し思ったし、色んな感情が入り混じって変な気分だった
そして昨日、いつもと変わらないようすでテレビを見ていた
わたしとれんげを映し出して、スクリーンは暗転した
雨の音がにわかに聞こえだして私はびしょ濡れになっていた
なにかれんげに言おうとして振り返ると
既にれんげはわたしの横で冷たくなっていた
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