美人の母をもちたかった/天野茂典
美人の母をもちたかった
美人の母をもちたかった
母は美人でもなければブスでもない
母は書道の師範の免許を持っているが
教養がなかった 尋常高等小学校しか
でていないからだ
ぼくは教養のある母をもちたかった
ぼくは教養のある母をもちたかった
母は社交ダンスにのめりこんでいた
本を読みだした 大正琴を弾き始めた
母はカラオケにのめりこんだ
ラジカセで何度も何度も練習していた
母は我慢強かった
店の経営の危機を何度も立て直した
母はへそくりまで持っていた
現実的に強いのだ けして逃げない
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