男が/mizunomadoka
 
古く錆びれた配管の中で
ライトを咥えて屈みこんでいる
作業服に目出し帽、ジーンズの尻は破れ
左手で右手を押さえている
くそったれな血め・・
鍋つかみだってなんだっていいからしておくべきだった
男は深い傷口を照らす
一体何で切ったんだ? なにもないのに
立ち上がり肩で汗を拭う
昼間なのにここは闇だ
配管の接続がギィと軋む
毒が入ってこないように
血はとめないほうがいいだろう
器用に舌先でライトを回転させ
迷宮の奥を照らす
そうだ闇だ。そいつを追いかけてきたんだ
男は思い出し、歩き始める
そして足音が小さくなる





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