レール/アズアミ
なにかの映画で見たような
あてのない線路
そこには空も海もなく
心地よい孤独だけが転がっている
空き瓶の中で
春が雪に変わり
冬が死んでゆく
廃駅のベンチに腰掛けると
一匹の猫がすり寄ってきた
マフラーの巻き方すら忘れたその猫を
ひざに乗せて背中を撫でる
遠くから汽笛が聞こえる
ゆっくりと大きくなる列車は
静かなホームを大袈裟に舞い上げて
目の前を通りすぎた
やがて猫はのどを鳴らすのをやめ
そそくさと改札を抜けていった
砂時計の底に秋が沈んでいく
待合室に天使は来ない
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