ジンクスが死んだ朝/ただのみきや
 
黒いスノーコートの男が
車通りのない休日の朝の国道で
ささやかな葬儀に参列していた
無言のまま カラスは己を取り戻し
静かについばみ始めた

おれはまだ夢の中に取り残されたよう
おれとおまえ 
カラスとおまえを重ね合わせては
分別違反の粗大ゴミのように
自己矛盾の張り紙だらけになって十分に死体だった

やがて大きな
棺桶みたいなバスが到着すると
おれだけが乗り込んで
現実とか日常とか呼ばれる領域に
幻のように融けていった
  
バスに揺られながら 
一度だけ 猫の声で鳴いて
  あとは石ころのように 
    そのままだった 


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