ジンクスが死んだ朝/ただのみきや
 
こんな朝に
カラスのカの字もありゃしない
太陽はふやけた面の木偶の坊だ
白い国道の上
黒いおまえは完全に死んでいる

暗がりのおまえは
いつも何かを舐めていた
おまえが前を横切る時には何時だって
「 ラッキー 」そう呟いた
おまえはおれの唯一のジンクスだった

だが今朝おまえが死んでいるってことは
おまえの前を横切る
おれがおまえのアンラッキーだったのか
そもそも本当に死んだのはおまえなの
それともおれが死んだのか

おまえはよくあの老いた飼い犬の皿から
夜食を食べていた
あの犬はそんなお前をすぐ側で見ながら
ただ黙って見つめていたっけ
まるで息子でも見
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