鎌倉のこと/渡邉建志
一睡もせず朝四時半、始発で鎌倉へ。まだ暗いうちに円覚寺の門をくぐる。暗い中に人が少し。お堂へ歩いていく。わけもわからずわたしはついていく。靴を脱ぐ。お堂へはいる。広くて寒い。座布団一つと小さな二つの座布団的塊をみんなもっていくのでわたしもそうする。お堂のまわりに長いすのように座る場所が囲んでいてみんなその上に座布団をしき、例の二つの塊をその上にのせ、おしりをその上にのせて胡坐を組む。二つの塊はいすだったようだ。知らなかった。
大仏の隣におっかないかんじでお坊さんが胡坐を組んで座る。何も話されない。皆何も話さない。ときどきおなかがなる。人々の。わたしの。さむい。突然拍子木。ぱーん。ぱーん。そ
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