事が終わると/
草野春心
事が終わると君は
床に落ちた下着を拾い
なまぬるい脚をとおした
ブラジャーをつける前に時計を巻き
白いシャツを着る前に
メンソの煙草に火をつけて
事が終わると僕たちは
随分遠くまで来たみたいだ
さっきまで君の瞳は
絵葉書で見た
エーゲ海の煌きだった
でもいまは真冬の日本海
僕はそこに一艘の漁船を浮かべ
どす黒い水面の
ゆらめく波立ちにむかって
たよりない釣り糸を垂らしている
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