透明な彼女/たちばなまこと
私は大丈夫をいくつ届けたのだろう
透明な彼女は
今にも白い光の中 消えゆきそうだったのだ
”四六時中”は彼女のそばにあるけれど
重い闇だったと泣いていた
透明な手足をうんと伸ばして 世界をも透明にしてごらんよ
思った程悪くはないから
こうして私もガラスの破片を
皮膚から浮かせて蒸発させてきたのだから
肌の向こうで流れる血液が
とくん とくん と私を呼んでいるようだった
私は彼女の水泡にとりこまれて呼吸を忘れ
眼球の奥の満ち潮と戦うのだ
精いっぱい笑うのだ
水の中には清純な魚がいっぱいで
むくんだ瞼を噛んでは 溶けてゆく
私には許すことしかできない
精い
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