ラスティネイルをジム・ビームライでうんと濃く作ってくれ/竜門勇気
 
眠れない夜は僕にはなかった
いつもヘドを吐きながら意識が戻ってくるだけで
眠りたいなんて思ったことは一度もなかった

腐った柿のヘタを何十個も飲み込んだあとに
胃の中に暴れ狂うミミズを一匹放ったみたいな気分が
少しだけましになったら部屋の扉を開けるんだ

部屋の扉は、光ったり、ストーブの側で忘れられた蝋細工みたいに
ぐにゅぐにゅ溶けたり、とにかくじっとしていないし
僕の手は部屋中あちこちにゆるいゴムで結ばれてるから
鉄だかアルミだかのドアノブをつかむまでに
積み重ねた本やレコードを叩き壊し、時にはカーテンの一枚も引きちぎらなければいけない

階段を降りるのも同じように難
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