すこし話しがしたいんだ/ただのみきや
と結婚したことを
泣きながら謝ったのだ
夜中に目が覚めると
ぼくは泣いていた
そしてしばらく泣き続けた
何十年も心の底に埋もれていた鉛の箱の蓋が開き
幼いころの古ぼけた思い出が まるで美しく瑞々しい蝶のように
よみがえったのだ
あなたの純粋な気持ちが
あなたの心を縛ることがないように
なんて無粋なことを言いはしない
あなたは一途で無鉄砲
猟犬のように殺し屋のように
相手を追いかけて行くのだろう
だけど人はいつか追いかけることや待つことに疲れ
自分を必要としてくれる場所に落ち着きたくなるものだ
あなたが選んだことを
過去のあなたが責めるだろう
だけどいつか
必ず自由になれる時が来るのだ
親愛なるまだ見ぬ友よ
あなたのためにぼくは祈る
愛されている者よ
強くあれ
あなたの忍耐に感謝して
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