夜の淵/信咲
暗い 暗い 夜の淵を歩いていると
君が生きていた頃を思い出す
君は何も話さないで
静かに笑っているだけ
何も考えずに歩みを進めてみる
そのうちに僕は痛みがあることも忘れる
だんだんそのことに慣れてくる
痛みに鈍くなる
そのうちに僕は君のことも忘れてしまうのか
思い出の中には帰れないし
君の声ももう届かない
僕たちの行く先はどこにあるんだろ
僕たちはどこに向かうんだろ
夜のとばりは何もかも隠してしまうから
二人で話した秘密のかけらも
友達になれそうだった約束の続きも
夜のとばりは何もかも隠してしまうから
言えなかったさよならの続きも
君が笑ったときの表情も
僕はこれからもきっと年をとる
年をとりながらいろんなことを忘れていく
自分が忘れることにも鈍くなるころ
一番大切にしているものも忘れてしまうんだ
一緒に笑った時間は帰ってこないから
泣いても何にも変わらないから
止まった時間のかけらによりかかっても
何も見えやしないから
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