産み月/ふるる
 
えるような
空虚なのだった
何度か、吐き気をこらえて
森を抜け山を越え雲を渡り
まっさかさまに落ち
でも感じないイタ味という
甘美だっただろうもの

ふるさとではない匂いを嗅いだ、
冷たい鉄剤を飲んだ、
穏やかな天使の瞳を憎んだ、

「あなたは気づかないの?
 あなたの目は、泣いているのに」

蓋をしたはずだった
こわい、

夫という生き物のいない
紅色の家で
救いの歌が
聞きたいと

願う

***

みちるちゃんは
お母さんお父さんという
空虚を持っている

それは水のようにさらさらで
火のように不安定

先月から子供を産める
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