読むあなた/ただのみきや
 
どこか静かなところへ行きたくて
あなたは本を開く
ぼくはすでに
本当に苦しい時にしか飲んではいけない薬を使い果たしていた

時は残酷ではなく むしろ紳士的な優しさで
少しずつあなたを 分解して塵へと変えてゆく
ぼくは夢の中の夢から覚めるときの
逆さまに滑り落ちる感覚をすでに知っていた

あなたの顔に美しいしわが刻まれてゆく
いつまでも本を読み続けるあなたはぼくの夢だった
ぼくらは決して出会うことのない
互いの心の鏡に映し出されたイコンだった

あなたが読む詩の中にぼくがいた
ぼくの書く詩の中にあなたがいた

誰かが安売りの哲学の爪で
美しくささやかな世界の壁紙
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