それほど悩むことではない/ただのみきや
あなたが仮に
桃色が好きだとして
桃色の服や靴
桃色の家具と桃色の壁
すべてを桃色に塗りつくしたとして
それでも気がおさまらず
全人類を
全世界を
空も海も
存在するものの全てを桃色に染め尽くしたなら
もうあなたが桃色を愛する理由は
なくなっているのかもしれない
たとえばあなたが
桃色に特別な執着を持ち
自分以外の桃色たちを
一つ
また一つと抹殺し
世界中の不幸な桃色たちの叫びがわき上がり
最後の断末魔も風化してしまうなら
やがてあなたは
孤独のあまり
自らありふれた
白か黒 とか
赤か白 とかを纏い
仲間を求めようとするのかもしれない
ほどよい少数派
このへんが たぶん
あなたが望んでいることなのだ
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